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論文1 「Allgemeine Psychopathologie」(Jaspers,K)について
<Subtitle>分裂病の治癒可能性に焦点をおいて

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論文1 Top Page (序文)
1、分裂病の治癒可能性に対するヤスパースの見解
2、分裂病は脳病か
 イ、ヤスパースの見解の概要
 ロ、疾患単位を理念とする研究の概要
 ハ、疾病学に限局した場合の科学的背景
3、分裂病の症状の心理学的理解の可能性について
 イ、ヤスパースの見解の概要
 ロ、分裂病に於ける精神療法の可能性
4、精神病理学と脳病理学の共働の道
 イ、ヤスパースの現象学の特徴
 ロ、真の理論と精神病理学の理論
 ハ、両者の共働の今日的意義
 ニ、分裂病の脳所見解明後の問題
5、治癒過程考察の欠如について(ヤスパースの)

おわりに
参考文献
3、分裂病の症状の心理学的理解の可能性について

ロ、分裂病に於ける精神療法の可能性

「狭義の精神病者では立入った精神療法は不可能である」「急性精神病者の中に時として非常に繊細な感受性と敏感さがあるのを知ることは重要であるがその他の多くの例では患者は至って無関心であり、どんな精神的つながりをもとうとしても無駄である。こうした場合は精神療法は無駄である。」(下巻P.425)繊細な感受性をもつ急性患者、破瓜型で神経症様状態と憎悪期との中間期の進行性の病的状態、あるいは回復した者に対する精神療法の可否の問題が残るだろう。
 神経症の場合には、「医師対患者の関係の最後のものは実存的交通」であるという。「人間自身としての人間が運命共同体の中でのみ自己を完成する」ことが究極の課題だとすると、分裂病の回復者にもその課題だけは少なくともあてはまるであろう。実存的交通の可能性は心理学的了解不能が大部分解消したという意味にとれば、見込みが不可能とは断定しにくく、一方、強度の器質的制約が残っているとするなら、実存的交通に於て、実存の世界内での無制約性がもともと超越によって授けられた限界に、伴侶として、どこまで肉薄できるかという疑問が無視できないという意味にとるなら、その効果の見込が薄くなる。ところで、ヤスパースは治癒過程注12を実地の上からみることはせず、又感受性のある急性分裂病者、緩慢な経過をとる分裂病者注13に対する精神療法の可能性についてはふれていない。

注12
治癒過程の用語は、澤瀉久敬、医学の哲学、誠信書房、1965、より借用
注13
ビンスワンガーの「精神分裂病」にみられる例等。エレン・ウエストは不食症の疑問もかけられているので、邦訳・に於ける症例を考慮した。

 

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